
子どもの病気の中で、中耳炎は比較的よくみられるもののひとつです。
中耳炎の診療で保護者の方から、「必ず抗生剤を飲む必要はありますか?」「熱や痛みが引いたら治ったと考えていい?」「治るまでにどのくらいの期間がかかりますか?」「何度も繰り返しているけれど大丈夫?」といった疑問や不安の声をよくいただきます。
この記事では、子どもの中耳炎がどのような病気なのか、なぜ子どもに起こりやすいのか、治療の考え方や治るまでの経過、繰り返す場合の捉え方について小児科医の視点からお伝えします。
子どもの中耳炎とは?
「中耳炎」という名前は聞いたことがあるかと思いますが、実際に耳のどこで何が起きている病気なのか、ご存じない方は少なくないと思います。まずは病気の基本構造と、なぜ子どもに多く見られるのかを説明します。
中耳炎はどのような病気?
耳は外側から順に「外耳(がいじ)」「中耳(ちゅうじ)」「内耳(ないじ)」の3つの部屋に分かれています。
外から見える耳の穴は外耳(外耳道)で、その一番奥に「鼓膜」があります。鼓膜の奥にある空間を「中耳」と呼び、中耳炎とは、この鼓膜の奥にある空間に、細菌やウイルスが入り込んで炎症が起きる病気です。
炎症が急激に起こると鼓膜が腫れて強い痛みがでたり、膿がたまったり、熱が出たりします。
子どもに中耳炎が多いのはなぜ?
中耳炎は大人よりも乳幼児に圧倒的に多く見られます。これには、子どもの体に特有の構造と発達上の理由があります。
鼻の奥と耳(中耳)は、「耳管」という細い管でつながっています。この耳管は、中耳の空気圧を調整したり、中耳にたまった分泌物を鼻側へ排出したりする役割を担っています。
大人の耳管は傾斜があり細長いのに対し、子どもの耳管は太く短く、水平に近い(傾斜が緩やか)という特徴があります。
そのため、風邪をひいて鼻水が出たとき、鼻の奥にいる細菌やウイルスが耳管を通って中耳へと移動しやすい構造になっています。加えて、子どもは自分でうまく鼻をかめないこともあり、中耳炎をおこしやすい要因となっています。
子どもの中耳炎はどのように起こる?
子どもの中耳炎の多くは、風邪をきっかけに起こります。
風邪をひくと、鼻やのどの粘膜に炎症が起き、風邪のウイルスや細菌が増殖します。このとき、鼻水がたまったり鼻づまりが起きたりすると、鼻をすする動作などによって、細菌やウイルスを含んだ鼻水が耳管を通って中耳に入り込んでしまいます。
中耳に入り込んだウイルスや細菌がそこで増殖し、炎症を起こすことで中耳炎が発症します。
なお、「鼻水が出たら必ず中耳炎になる」わけではありません。お子さんの耳管の形や体調、感染した病原体の強さなど、さまざまな要因が重なったとき中耳炎へと進行します。
子どもの中耳炎にはどんな種類がある?
子どもの中耳炎、代表的なものとして「急性中耳炎」と「滲出性(しんしゅつせい)中耳炎」の2つがあります。
急性中耳炎
中耳に細菌・ウイルスが入り込み、急激に強い炎症を起こすタイプです。
鼓膜の奥に膿がたまり、鼓膜が赤く腫れあがります。急な耳の痛みや発熱、耳だれ(膿が鼓膜の破れ目から外に出てくる)などの症状が特徴です。乳幼児では言葉で痛みを訴えられないこともあり、不機嫌になったり、夜泣きをしたり、しきりに耳を気にする仕草を見せることもあります。炎症を起こす原因によって「細菌性中耳炎」「ウイルス性中耳炎」があります。
滲出性中耳炎
急性中耳炎のような激しい痛みや発熱などがなく、中耳の中に滲出液(液体)がたまったままになっている状態です。
急性中耳炎の炎症が治まった後に液体だけ残る場合や、風邪にかかったことでゆっくりと液体がたまっていく場合などがあります。痛みがほとんどないため気づかれにくいですが、耳がつまったような感覚(耳閉感)や、聞こえにくさで気づかれることがあります。
子どもの中耳炎はどう治療する?
子どもの中耳炎の治療は、「中耳炎になったら全員抗生剤」「毎回同じ飲み薬
治療」というものではありません。お子さんの年齢、症状の強さ、鼓膜の腫れ具合、全身状態などを総合的に判断して治療方針が決まります。
中耳炎では抗菌薬を必ず使う?
「中耳炎と診断されたら、必ず抗生剤を飲まなければいけない」と思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。
軽度の急性中耳炎の場合、その原因が細菌であっても、お子さん自身の免疫力で自然に改善していくこともあります。そのため、以下のような要素を考慮しながら慎重に治療を選択します。
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年齢(2歳未満か)
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痛みの強さや発熱の有無
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鼓膜の赤みや腫れ方
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耳漏があるか
- 耳の違和感(不機嫌・泣く)
軽症であり、年齢や全身状態に問題がない場合は、まずは鎮痛薬などを使いながら3日ほど経過観察を選択することもあります。
一方、激しい痛みが続いていたり、高熱がある場合、2歳未満の乳幼児の場合、鼓膜の腫れ方が激しい場合、耳漏がある場合場合には適切な抗菌薬の投与を行います。
抗菌薬は「使えば使うほど良い」というものではありません、ウイルス感染であれば効果がまったくありません。また、抗生剤にも強さがあり、弱い炎症には弱い抗生剤、強い炎症には強い抗生剤と炎症の強さによって変えていく必要があります。いつも強い抗生剤を使っていると菌も進化して強い抗生剤が効かなくなります(耐性菌)。この耐性菌が悪さをすると使える抗生剤がなくなってしまうので、子どものうちから強い抗生剤を気軽に使うのは勧められていません。
中耳炎の治療では痛みへの対応も大切
急性中耳炎では強い痛みでお子さんが夜眠れなかったり、ぐずったりすることがよくあります。中耳炎の治療において、この「痛みをやわらげること」はとても重要です。解熱鎮痛薬(アセトアフェンなど)を使用し、痛みをやわらげてお子さんの睡眠時間を確保してあげてください。解熱鎮痛剤がない時には冷やしたタオルを耳に当ててあげるのも効果的です。
子どもの中耳炎はどのくらいで治る?
保護者の方から、「どのくらいで治りますか?」「抗生剤はいつまで続ければ?」という治療期間に関するご質問を多くいただきます。
結論からお伝えすると、痛みや発熱などの「目立つ症状」が消えるまでの期間と、中耳の炎症が治まるまでの期間にはズレがあり、中耳の炎症がしっかり治まるまでは抗生剤を続けていただく方が安心です。抗生剤の期間は重症度にもよりますが5~10日とされています。
痛みがなくなったら中耳炎は治った?
急性中耳炎の場合、適切な治療によって、耳の痛みや熱は数日(2~3日程度)でやわらぐことが多いです。
しかし、「痛みや熱がなくなった=中耳炎が治った」とは限りません。
痛みが引いた後も、鼓膜の奥には炎症によって生じた液体(滲出液)が残っていることがあり、この液体がなくなるまでには、数週間から、場合によっては数ヶ月かかることもあります。(慢性中耳炎)
症状がなくなったからといって抗生剤をやめてしまうと、残っている細菌が悪さをして中耳炎ぶり返す事もありますし、中耳に液体が残ったまま「滲出性中耳炎」へ移行し、聞こえにくさが長引いてしまうことがあります。痛みが引いた後も、医師から「もう大丈夫ですよ」と言われるまで、経過確認してもらうことが大切です。
子どもの中耳炎を繰り返す場合は?
「一度治ったと思ったら、また中耳炎になってしまった」「年に何度も繰り返している」とお悩みの方もいらっしゃるかと思います。
中耳炎はなぜ繰り返すことがあるのか?
子どもが中耳炎を繰り返しやすい(反復性中耳炎)のには、いくつかの要因があります。
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耳管の働き・免疫力がまだ未熟である
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保育園や幼稚園で風邪をもらいやすい
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自分で鼻をかむことができないので中耳に鼻水が行きやすい
このように、お子さんの年齢や周囲の環境、鼻やのどの状態が影響しています。成長とともに耳管の構造が大人に近づき、免疫力がついてくると、自然と繰り返さなくなっていくことがほとんどです。
繰り返す場合は経過をみながら評価する
中耳炎を何度も繰り返すと「何か重大な病気なのでは」と不安になるかもしれませんが、成長過程の多くのお子さんに見られる現象です。
ただし、繰り返す場合には、以下のような点に注意しながら経過を見ていく必要があります。
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繰り返すたびに中耳の炎症がしっかり治まっているか
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中耳炎が治った後に液体のたまりは残っているか
- 液体が残っているなら、その後完全に消えているのか
中耳炎になった後、鼓膜の奥に液が溜まってしまう事があります(滲出性中耳炎)。この液体が消えた後に次の中耳炎を起こすのか、残ったまま次の中耳炎を起こしているのかが重要です。液体が残ったまま中耳炎を繰り返しているのであれば、この液体を一度なくしてあげる必要があるかもしれません。その場合には鼓膜にチューブを通してあげる外科的処置(チュービング)が必要になります。当院ではこのチュービングは手技に慣れた耳鼻科の先生が必要と考え、ご紹介させていただいています。
よくあるご質問(Q&A)
Q1:子どもの中耳炎は自然に治ることがありますか?
A.軽度の急性中耳炎であれば、お子さん自身の免疫力によって改善していくこともあります。ただし、症状の程度や年齢によっては抗菌薬の治療が必要になるため、まずは医療機関で鼓膜の状態、重症度を確認してもらうことをおすすめしています。
Q2:中耳炎になったら抗菌薬は必ず必要ですか?
A.必ず必要というわけではありません。お子さんの年齢、症状の強さ、鼓膜の腫れ具合などによっては抗生剤なしで経過を見ることもあります。中耳炎のたびに強い抗生剤を使っていると、効かなくなる(耐性菌)こともあるので注意が必要です。
Q3:耳の痛みがなくなれば中耳炎は治っていますか?
A.痛みや熱が引いても、鼓膜の奥に液体が残っている場合があり、完全に治ったとは限りません。中耳の状態が元通りになるまでには時間がかかるため、指示された期間は治療継続が必要です。
Q4:子どもは中耳炎を繰り返しやすいですか?
A.お子さんの耳管は太く短く水平に近いため、大人に比べて中耳炎を繰り返しやすいです。また、成長に伴って耳管の構造が発達し、風邪をひく頻度が減ってくると自然と落ち着いていくことが多いです。
Q5:急性中耳炎と滲出性中耳炎は何が違いますか?
A.急性中耳炎は痛むや発熱などの急激な炎症を伴うのに対し、滲出性中耳炎は強い痛みや熱がなく、中耳に液体がたまっている状態です。急性中耳炎が治っていく過程で滲出性中耳炎に移行することもあります。
まとめ
子どもが中耳炎になりやすい理由は、耳管の構造や免疫の発達段階など、子どもならではの特徴があるからです。
治療においては、抗菌薬を一律に使うのではなく、お子さんの状態に合わせて適切に選択すること、そして「痛みが消えてからも中耳の状態が戻るまでしっかりと経過を見守ること」がとても大切です。抗菌薬の使い方、種類に関しても子どもと大人ではかなり異なるため注意が必要です。
痛みがやわらいだ後も、中耳の中に液体が残っていないかを確認し、必要に応じて鼻のケアなどを行うことで、滲出性中耳炎への移行や急性中耳炎の再発を防ぎやすくなります。
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下北沢周辺でこのようなお子さんの耳や鼻の症状、中耳炎に関する疑問やお悩みがありましたら、お気軽に当院へご相談ください。
当院では、小児科医の視点からお子さん全身の状態や鼻症状を含めて丁寧に診療を行い、必要に応じて耳鼻咽喉科などの専門医療機関とも連携を取りながら、お子さんとご家族に寄り添った対応を心がけています

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