少しづつ暖かくなってきて、「虫さされ」の相談が増えてきています。
みなさんがよく耳にする蚊やノミ、ダニ以外にも様々な「虫」がヒトを刺したり、咬みついたりします。
ほっておくと皮膚から感染を起こし「とびひ」になってしまうこともあるので、虫さされ対策、さされた後のケアについてお話ししたいと思います。
1.虫さされの症状
虫さされによる主な皮膚症状には、「痛み」「かゆみ」「腫れ」などがあり、こどもの虫さされでは「かゆみ」対策が大切です。
「かゆみ」は虫から皮膚に注入された成分に対するアレルギー反応から生じます。アレルギー反応は、直後~60分後くらいに起こる「即時型反応」と、それ以降に症状が出る「遅延型反応」に分かれ、こどもたちは虫刺されの経験が少ないため、刺された直後には症状が現れず、翌日以降にかゆみや腫れが出る、「遅延型反応」だけを示すこともあります。ただし、複数回刺されていれば、すぐに反応が出る「即時型反応」も起こります。同じ時に蚊に刺されても、大人はすぐかゆくなって翌朝には症状が消失するのに、こどもは翌朝になってからすごく腫れるということも起きます。
さらに、こどもの虫さされが重症になってしまう原因として、長引くかゆみが我慢できず、刺された部分を掻きむしってしまい、かゆみがどんどん増加してしまったり、搔きむしった場所から細菌が侵入し、皮膚の感染症を起こすことなどがあります。
皮膚細菌感染症の代表的なものとして、感染した場所が赤く腫れあがり、痛みを伴う「蜂窩織炎(ほうかしきえん)、感染部位がどんどん広がっていく「とびひ」などがあります。
特にハチ刺されには注意が必要で、数分以内に血圧低下や意識消失を伴うアナフィラキシーショックを引き起こす場合もあります。蜂に刺されて、じんましんや呼吸苦、腹痛、などの全身症状が現れる場合には直ちに小児科を受診してください。
2.虫刺されの治療法
虫刺されの治療は、「かゆみ」を止めることが基本となります。
かゆみ止めとして以前は抗炎症剤の軟膏を使っていましたが、こどもたちではかゆみが抑えきれないこと、逆に肌荒れを起こしてしまうことなどから、今ではステロイド外用薬が基本となっています。外用薬を早い段階で使用することで、炎症後の色素沈着防止につながります。また、掻き壊してしまうと、見た目は問題ないのにかゆみを訴える「痒疹」へと進行してしまう事もあります、虫さされの腫れがひかない場合には早めに小児科を受診してください。
かゆみが強い場合には、かゆみ止め(抗アレルギー薬)も使用されます。細菌感染が疑われる伝染性膿痂疹(とびひ)、蜂窩織炎の状態になると、抗生剤(内服、軟膏)が必要になることもあります。
特に注意が必要なのは、北海道や本州中部山岳地帯でマダニに刺された場合で、これはライム病のリスクを伴います。その場合、抗生剤で治療を行う必要があります。また、マダニが皮膚に付着している場合、無理に取り除こうとするとマダニの口器が皮膚の中に残り、異物肉芽腫を形成する可能性があります。そのため虫体を慎重に取り除く処置を行います。
3.虫刺されの予防
虫刺されを効果的に防ぐための方法について、当たり前ですが、虫の多い時間帯と場所を避けることが基本になります。
例えば、蚊やブヨは夕方から夜にかけて活発になるため、この時間帯に外出する場合は虫よけを使用して防御しましょう。また、湿気の多い草むらや水辺は多くの虫が集まるため、そうした場所に遊びに行った際。虫さされを見つけたら早めにステロイド軟こうを使うのも効果的です
次に、適切な服装を心掛けることです。肌の露出を抑えることは、虫刺されを予防するために非常に効果的です。こどもたちは涼しい恰好が好きなので難しいとは思いますが、長袖と長ズボン、帽子を着用し、足元は靴下や靴で保護しましょう。明るい色の服は虫に狙われにくいと言われていますので、選ぶ際の参考にしてください。
市販の虫よけスプレー、虫よけパッチは、蚊や他の昆虫に有効です。
4.とびひのリスク、対策
虫刺されがきっかけとなる感染症の中で頻度が高いのが、「とびひ」として知られる細菌感染症です。これは、虫刺され後に皮膚を掻きむしることで傷から細菌感染が起こり、周囲に広がっていく状態です。感染した部位は赤くジュクジュクとして、水疱が形成されます。とびひは感染力が強いため、触れた手などを介して、他の部位や他人に広がることがあるので、早期の対策が重要です。
普段から爪を短く切って、かゆくて書いたとしても皮膚が傷つかないようにしてあげてください。
5.応急処置について
冷却:虫に刺された部位を冷やすことが有効です。流水で洗い流したり、氷をタオルに包んで当てたりすることで、腫れやかゆみを軽減できます。
状況の観察:患部の状態をよく観察し、腫れや発疹、水ぶくれの出現などを注意深く見守ります。もし症状が悪化したり、発熱やいつもと異なる反応が見られる場合は、早めに小児科を受診してください。
6.医療機関を受診するタイミング
虫刺されは通常、家庭での応急処置で問題ありませんが、症状が悪化した場合や通常と異なる症状が見られる際は医療機関を受診することが重要です。
特に、ハチに刺された後に急速に広がる全身の発疹、息苦しさなどの全身的な症状が出た場合は、重篤な即時型アレルギー反応(アナフィラキシー)の可能性もあるため、速やかに医療機関を受診してください。
緊急性は無くても、刺された箇所の赤みや腫れが増す、水ぶくれや膿が現れる、あるいは激しい痛みやかゆみが持続する場合には、感染症やアレルギー症状の可能性が考えられます。
アレルギー体質のおこさんでは、虫さされの反応が強く出てしまう「蚊刺過敏症」の可能性もあります。アレルギー専門医にご相談ください。
虫刺されにより皮膚の異常や症状の悪化を感じた際は、小児科専門医の医師による診断と治療を受けることで、早期に適切な対応が可能となります。何かお困りのことがあれば、いつでもご相談ください。
クリニックからの最新情報をお知りになりたい方は公式LINE登録お願いします。