百日咳の患者さんの数が増えていることは以前のブログでもお伝えしましたが、その数はおさまることなくなく増え続けています
それに合わせ、妊婦さんに予防接種を打つことで抗体を作り、胎盤を通してその抗体・免疫力を胎児に届ける(移行抗体)が注目されています
当院にも妊婦さんからRSウイルスや百日咳の予防接種に対する問い合わせが多く
当院でも行っている妊婦さん向けRSウイルスワクチン(アブリスボ)は1種類しかなく混乱しないのですが、百日咳に対するワクチンは大きく分けて2種類あるため混乱する方もいらっしゃるかと思います
今回は妊婦さん向け百日咳ワクチンについてお伝えしたいと思います
【ワクチンの種類】
日本で接種できる百日咳のワクチンは主に2種類あります
いずれも百日咳単独のワクチンではなく
ジフテリアDiphtheria、百日咳Pertussis、破傷風Tetanusの3種類のワクチンをミックスしたものになります
それぞれの頭文字をとってDPTともよばれ、三種混合ワクチンの名前でも知られています
小児用に開発されたDPTワクチン(トリビック)と海外製の成人用のTdapワクチン(boostrix)の2種類があります
【DPTワクチン(トリビック)】
トリビックは国産ワクチンで、もともと小児用に開発されましたが、2018年以降は適応が拡大され、成人にも接種が可能となっています
2023年には産婦人科診療ガイドライン-産科編(日本産婦人科学会)でも、妊婦に対しての有益性投与の記載がされるようになり、現在のように百日咳が流行する時期での接種が勧められています
海外では妊婦さんに対する三種混合ワクチンは、後ほどお話しするTdapワクチン(boostrix)が主流なため、ワクチン接種での赤ちゃんへの免疫力が証明されているのはTdapワクチンなのかもしれません
ただ日本でも妊婦さんへのDPTワクチン接種がすすんでおり、赤ちゃんへの免疫力は十分とも考えられています
妊婦に対する百日咳含有ワクチン接種の抗体応答と反応原性及び児への移行抗体に関する研究
接種時期:妊娠27週~妊娠36週
接種方法:0.5mlを皮下に1回注射
【Tdapワクチン(boostrix)】
boostrixは海外で開発された成人用の3種混合ワクチンです
DPTワクチン(トリビック)にくらべジフテリアが減量されたりと成人用に作られており、接種部位の腫れなどは少ないです
世界的に妊婦さんへ接種されており、接種した時の赤ちゃんへの免疫力はDPT(トリビック)よりも証明されています
ただし、日本では薬事承認がされていないため、海外から輸入しての接種となります
また、万が一ワクチンによると考えられる副反応や後遺症が起きた際には、薬事承認されていないため、国が用意しているワクチン副反応救済制度を使用できません
接種時期:妊娠27週~妊娠36週(27週~30週が望ましい)
接種方法:0.5mlを皮下に1回注射
それぞれのワクチンにメリット・デメリットがありますが、
- 国内承認、何かあった際の補償の有無を優先するのであれば、DPT(トリビック)
- 世界的な実績を優先するのであれば、Tdap(boostrix)
を選択することになるかと思います。
妊婦さんへの百日咳ワクチン接種が進み、赤ちゃんへの百日咳感染が少しでも減ればうれしいです
百日咳ワクチンに限らず、子どもへの予防接種、妊婦さんへのRSウイルスワクチン(アブリスボ)など、ワクチンについて、ご相談がありましたらお気軽にクリニックまでご連絡ください